一人の男の子は、受験準備中から精神的に不安定になったという。まずチック症状が出た。パチパチとまばたきがとまらない。最初は「やめなさい」と叱ったが、逆効果でますますひどくなった。つぎに「夜叫というのでしょうか。ぐっすり眠っているはずの深夜に突然すさまじい叫び声をあげて、ベッドから飛び起きて暴れる」という行動がはじまった。三日ほど続き、いよいよお医者さんに連れていったほうがいいかしらと思いはじめた矢先、はじまったときと同じくらい突然終わって、おとなしく静かになった。「夫がとても心配して、もう受験なんてやめさせたほうがいいと言いだしたんで、塾の先生にご相談したんです。そしたら『とんでもない。お母さんがそんなに弱腰だから、子どもが甘えてチックや夜泣きをするんです』と強くいさめられました。そういうお子さんが、二十人ほどのクラスのうち、毎年必ず二、三名はいるとお聞きして、そんなものなのかとガマンさせました」そのうちチックも夜叫もおさまり、息子は第一志望でこそなかったが、無事に第二志望の小学校に入学した。一、二年のうちは何事もなく過ごしていたのだが二年生の途中あたりからどうも具合がおかしくなった。何かあるたびにおなかが痛くなったり、ひどいときは熱が出る。テスト、運動会、友だちとケンカした、先生に注意されるなど、何かきっかけで熱が出るのかはわからない。負けず嫌いな母親なので、最初は「受験のせい」とは認めようとしなかったが、高学年になっても症状は悪化するばかり。ついにカウンセリングを受けるようになり、「幼児期からのストレス」と診断されてしまった。子どもは通っているその私立小学校がとても気に入っていて、親子とも学校に不満はないそうだが、はたしてこのまま通いつづけられるかどうか不安があるという。
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