「脳の病気」と呼ぶのには留保が必要

2012.02.06

たとえば統合失調症の場合、親子間のコミュニケーションの歪みが原因として問題視された時期がありました。しかし今は、そのような言説はほとんど聞かれません(かと言って完全に否定されたわけでもありません)。今は、脳内の伝達物質の一つであるドーパミンの過剰が、ほとんど常識のように語られています。精神疾患全体に、脳内物質の異常が原因としてあげられることが多くなっている気がします。しかし、それらの多くは、科学における他の事実認定とくらべると、あやふやな仮説のレベルにとどまっていると言わざるをえません。さらに、もっと大事なことがあります。多くの人は、たとえば「うつ病は脳内のセロトニンの減少が原因だ」と聞くと、「ああそうか、うつ病は脳の病気なんだ」と思ってしまいます。しかし、仮にうつ病のセロトニン減少説が単なる仮説ではなく、科学における事実認定のプロセスを経て十分に検証されたものになったとしても、なお「脳の病気」と呼ぶのには留保が必要なのです。